【帽子の色を変えるまで】“ノート”をきっかけに、練習への向き合い方が変わった 中村孔翼候補生
日本競輪選手養成所では、定期的に行われる記録会のタイムによって、候補生の能力を評価し、着用する帽子の色を決めています。この連載では、第2回記録会で成績を伸ばし、帽子の色が変わった3人の候補生に、日々の取り組みや成長のきっかけを聞きました。
今回は中村孔翼候補生です。父と兄も競輪選手であり、高校時代にスプリントで実績を残してきた中村候補生ですが、第1回記録会の評価は青帽。そこから第2回では全4種目のタイムを縮め、白帽を獲得しました。変化の背景にあったのは、ペダリングへの意識と、毎日1ページを埋めるノート。自分の持つ力を発揮するために、練習との向き合い方を変えてきました。

第1回記録会
パワーだけで乗り越えようとしていた
Q:第1回記録会の結果を、どう受け止めていましたか?
前年度より評価の基準が上がったとはいえ、最低でも黒帽は取りたかったですし、もっと上の順位を目指していました。もっと良い評価を取っている仲間もいたので、そこに並びたいという悔しさが大きかったです。
記録会の直前になっても、いろいろな種目のタイムが上がり切っていない状況でした。その時は、このくらいのタイムになると覚悟はしていました。ただ高校時代に思い描いていた自分と比べると、少し情けないというか、残念なタイムだったと感じました。
Q:養成所に入って、どんな課題に気づきましたか?
高校の時は練習でどれだけ最大出力を出せるかを大事にしていました。重たいギヤを踏むことにフォーカスして、パワーでどうにかしようと考えていたんです。
でも、鉄のフレームに乗ったり、軽いギヤでペダリングをしたりする技術では、みんなよりすごく劣っていると感じました。それまでは、そもそもペダリングについて考えるという発想がなかったんです。
パワーだけで乗り越えられると思っていたのはまだまだ未熟でした。養成所に入って、自分の研究する姿勢の足りなさを痛感しました。
毎日1ページのノートが 練習への向き合い方を変えた
Q:第2回に向けて、1番大事にしたことは何ですか?
自転車にしっかり乗り込むことです。それまではワットバイクなど、機械を使うメニューが中心でした。その基礎も大事にしながら、バンクで考えて走る練習も取り入れて、バランスを見直すようにしました。
そのなかで、未熟だと感じたペダリング技術を改善しようとしました。練習ごとにノートを取って、研究を重ねました。
Q:ノートには、どのくらい書き込んでいるんですか?
小さめのノートに、毎日、どんな時でも必ず1ページは埋めるようにしています。これは兄(中村嶺央:129期)の受け売りです。兄は昔から、ノートをいっぱい埋められるように、しっかり考えて書いたり、練習自体を増やしたりしていました。
それを自分でも取り組んでみようと思いました。「ノートを埋める」ために、考えることが癖になりましたし、練習量を増やすことに繋がりました。
Q:書くことを習慣にして、行動にも変化はありましたか?
自分のなかで大事にしていたのは教場での練習にプラスアルファをすることでした。練習が終わってどんなにきつい時でも、バンクやローラー場で、何かをやろうと心がけていました。本当にきつい時でも周回だけはするといった形です。そこで気づけることが意外とありました。
それから、本当にいろいろな人に聞き回りました。いろいろな意見を聞いて、「この人の意見は自分に合っているな」と考えながら、自分に合うものを取り入れていきました。
Q:第2回では、1000mを1秒13、3000mを3秒62短縮しました。長い距離では、何を変えたのでしょうか?
200mなど短い時間での取り組みは、意識よりも出力を優先してしまう気持ちがあります。長距離になって考える時間がある種目でも、力を出しすぎる場面があって、それが後半のロスにつながっていると感じていました。そこでペース配分を考えて、行くところは行くけど、抑えるところは抑える。メリハリをつけて踏むようにしました。
まずは、自分が今持っている100%の力を出せるようにしようと思いました。自信とまではいかないかもしれませんが、そのくらいのタイムを出せるポテンシャルはあるのかなと思っていました。それを本番できちんと出すための取り組みでした。

第2回記録会
自分の強みを 競走の中でも活かすために
Q:白帽を獲得した今、次の目標を教えてください。
総合的な力では、まだトップの選手に全然足りていないと感じます。その中でも、少しは近い部分があるのかなと思うのが200mです。自分も得意としてきた種目なので、そこで上位に限りなく近づきたいです。1000mと3000mも基礎的なレベルを上げて、ゴールデンキャップの基準を切れるように頑張りたいです。
Q:競走訓練も始まりましたが、どんなことに取り組んでいきたいですか?
高校からの強みだったゼロからのダッシュが競走では活かしにくい部分があります。流れがあるなかでのスピードが必要なので、今は苦戦しています。もう少し研究を重ねて、自分の強みを活かせるところを見つけていきたいです。

写真中央
毎日1ページのノートを埋めるために、考え、走り、人に聞く。中村候補生が積み重ねてきたのは、自分の力を走りに結びつけるための工夫でした。白帽を獲得した今も、競走の中でダッシュ力をどう活かすか、新たな課題に向き合っています。日々の研究が次にどんな走りにつながるのか、今後の成長にも注目です。
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