積雪の多い地域に所属する選手の中には、冬の間、所属地区を離れて別の地域で練習を行う「冬季移動」という取り組みを行うケースがあります。厳しい気候条件の中でも十分なトレーニング環境を確保するための、競輪選手ならではの選択肢のひとつです。

北海道所属で2024年にデビューした小堀敢太選手(125期)も、そうした冬季移動を行う選手の一人。冬季は大阪・岸和田競輪場を拠点に、日々トレーニングに励んでいます。
“冬季移動”という取り組みにスポットをあてた前後編インタビュー。前編では、小堀選手が競輪選手を志すまでの道のりについて話を伺いました。

自転車なら何も気にせずもがける

Q:競輪選手を志す前は、他のスポーツをされていたのでしょうか?

サッカーに陸上、スキー、トライアスロンと元々色々なスポーツをやっていました。どのスポーツも楽しかったのですが、全部中途半端になっていて、最後に残ったのが自転車でした。トライアスロンや、ウィンタースポーツの夏季練習の練習としても自転車に乗っていましたし、高校からは自転車競技の大会にも出場していました。自転車に本格的に取り組むようになったのは高校2年生の頃です。

Q:北海道はウィンタースポーツの印象が強いですが、自転車競技にも馴染みがあるのですか?

そうですね。木村弘(青森・100期)選手や高橋晋也(福島・115期)選手も、スピードスケートの経験者。ウィンタースポーツから自転車に行く人は多いと思います。僕の場合は、自転車部がなかったのでスキー部に所属していたんですけど、冬は学校の裏にあったスキー場でスキーをしたり山岳トレイルランをして、夏は練習を補うために自転車やマラソンをやっていました。

Q:周りで自転車競技に取り組む他の選手も、冬はウィンタースポーツ、夏は自転車に取り組む選手が多かったのですか?

自転車だけやっている後輩や他校の選手もいたと思います。冬は家の中でワットバイクに乗ったりして練習していました。でも僕は、家の中で汗だくになって自転車に乗る楽しさが分からなくて(笑)。自分の好きなように練習したいと思って、色々なウィンタースポーツに取り組んでいましたね。

Q:他のスポーツもやっていた中で、最終的に自転車を選んだ理由は?

体を動かすこと自体が好きでしたが、おそらく性格上チームスポーツは合わなかったんですよね。サッカーでキーパーをやっていても、気がついたらゴール前に出ちゃうような少年だったので(笑)。高校2年生の頃にトラック競技を始めた時に、とにかく楽しかったのを覚えています。ロードだと車や信号機を気にして走らないといけなかったり、注意しなくてはいけないことが色々あって、走った距離の倍以上疲れてしまう感覚だったんです。でもトラック競技は何も気にせずもがくことができる。そこが夢中になった理由だと思います。

なんで自転車に乗っているんだろう

Q:北海道を出て京都産業大学の自転車競技部に進まれてからは、それまでの練習環境と大きく変化したと思います。1年中自転車に乗れる環境になっていかがでしたか?

冬も練習できて嬉しいというよりは、寒くて家から出たくないっていう気持ちでした。良く勘違いされるのですが、北海道民は寒さにそこまで強くないんですよ(笑)。二重窓で床暖ついている分、家の中は北海道の方が暖かいですし。

Q:とはいえ『全日本大学対抗選手権大会』の1㎞TTでは2位、『国民体育大会』(現・国民スポーツ大会)のチームスプリントでは優勝されるなど、好成績を残しています。

大学3年生くらいからは結果が出はじめました。ただ、自転車競技部の同期に谷内健太(京都・125期)選手がいて、彼の方が常に何でもできたので、ずっと自信がなかったです。他にも、ロードが強い選手も多くて、自分だけ置いていかれて……なんで自分は自転車に乗っているんだろうと思う時も結構多かったです。正直に言えば、部活に行きたくない時もありました。

一度は就職の道を歩むも……

Q:最初は競輪選手になるのではなく、企業に就職しようとしていたと伺っています。そこから競輪選手を志したのはなぜ?

最初は普通に就職しようと思って、大学4年生の4月には地元の銀行から内定をもらっていたんです。でも、2022年に伊豆で開催された『全日本学生選手権トラック自転車競技大会』で、森田一郎(埼玉・125期)選手や髙橋舜(宮城・125期)選手、福田健太(宮城・125期)選手、中村龍吉(福島・125期)選手といった選手たちが養成所を受けると言っていて。谷内は競輪選手になるために大学を選んだと元々知っていたのですが、同期の皆んなが受けるなら自分も受けてみようかなと思いました。養成所に願書を出したのも、期限ギリギリの7月くらいに出した記憶があります。

Q:“絶対に競輪選手になりたい”という強い想いを持っていたわけではなかった。

そうですね。でも、自転車に乗っている時間は自分の中でリラックスできるすごく好きな時間。プロになれるのであればなろう、というくらいの気持ちでした。養成所の一次試験が終わって、11月末くらいに結果が出たくらいの時点で、内定をいただいていた企業にお断りを入れました。

走るのは研究費を集めるため

Q:お金を稼ぎたい選手や、レースが楽しくて走る選手、さまざまな競輪選手がいると思いますが、小堀選手は何がモチベーションになっていますか?

レースでも練習でも自分の納得できる走りができた時は楽しいですが、純粋に走ることが好きで競輪選手を続けているというと若干違う気がします。かといって、車やバイクにも全く興味はないんですよね……ただフレームは色々と試したくて、いっぱい作っています。そういう意味では、研究費を集めるために走っている部分はあると思いますね。

Q:レースで稼いだお金を自転車に注ぎ込む。すごくストイックな印象です。

そんなことはないと思います(笑)。でも、自分はまだ2024年にデビューしたばかりで、何が自分に合うのかわからないなので、とにかく試したいんです。古性優作さんや南修二さんのような自分の走りを確立された選手であれば同じ寸法で年に1台作るくらいでいいのかもしれませんが、これからの選手生命のことを考えても、今はお金は気にせずに注ぎ込んだ方がいいと思っています。もし買ったフレームが自分に合わなくても、知り合いで欲しい選手はたくさんいる。うまくいって、レースで勝つことができればすぐに回収できますしね。

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