「毎日がどんどん楽しく」壁にぶつかって気づいた本当に大切なコト 尾崎睦選手インタビュー 後編

2015年に競輪選手としてデビュー、通算400勝を達成したほか、ガールズケイリンの最高峰『ガールズグランプリ』に4度出場するなど、トップ選手として活躍を続ける尾崎睦選手(108期)。
競輪選手になる前は、ビーチバレー選手として『全日本ビーチバレー女子選手権大会』の優勝や、年間成績を競う『JBVツアーランキング』のトップを獲得するなど、華々しい成績を残してきました。
競輪選手として「人生を変えた」尾崎選手に話を伺うロングインタビューの後編です。
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競輪選手ってすごい

Q:養成所生活のなかで、ビーチバレーの選手としてやってきたことが活きた場面はありましたか?
練習には意味があって、自分が強くなるため、うまくなるためにやっていることだと考えられるメンタリティは、それまでの競技経験で培われたものだと思います。やらされているのではなく、前向きに練習することができました。
Q:卒業記念レースで優勝、在校成績1位と注目を集めて迎えたデビュー戦はいかがでしたか?
ビーチバレーをやっていた時とは比べ物にならないくらい、とにかく緊張しましたね。
周りから「いつデビューなの?」とたくさん聞かれましたし、メディアの方にもたくさん来ていただいて、競輪選手ってすごいんだなと思いました。

結果ではなく、最大限の努力を続けることが大切
Q:2015年のデビュー以降、翌年から3年連続で『ガールズグランプリ』に出場するなど順調にキャリアを積み上げていきましたが、壁にぶつかったことはありましたか?
2022年にグランプリ争いから外れてしまった時、「もういいかな」と思ってしまったことがありました。気持ちを保つのがいちばん難しいことだと思うのですが、苦しい中で何年も続けてきた気持ちの糸が、その時プツンと切れてしまったんです。

でも、そんな時でも変わらず応援してくれる人たちの存在に気づいたんです。それまでは、「勝たないと周りの人に喜んでもらえない」と思っていたのですが、そうではないと気づくことができました。
そのことがきっかけで、「結果ではなく、自分ができる最大限の努力を続けることが大切なんだ」と考えるようになったんです。それが、応援してくれている人たちへの恩返しになるんだ、って。そう思ったら、一気に気持ちが楽になって、次第に成績にもつながっていくようになりました。

2024年の『ガールズグランプリ』
Q:周りの方の支えで、復活することができた。
今は、「応援してくれている人たちが喜ぶ顔を見たい」というだけを考えて自転車に乗っています。「グランプリに出たら、応援してくれているみんなはどんな顔してくれるんだろう」とか。そうすると、「今日はこれで終わりにしていいのかな。本当にやり切ったかな」って、自然と思えるようになったんです。明日は今日よりももうちょっと頑張ってレベルアップしよう、って。
そこであらためて、「競輪って楽しいな」と感じましたね。まだまだ自分の知らないことがいっぱいあるんだな、って。毎日が楽しくなっていく今日この頃です(笑)。

競輪に出会えて、本当によかった
Q:尾崎選手が考える、ガールズケイリンの魅力とはどのようなものでしょうか?
女性のプロスポーツとして成り立たっている競技は、テニスやゴルフなど、数えられるくらいだと思います。ただ、そういった競技は、小さい頃からやっていないとトップに立つのは難しいのかなと感じます。
一方で競輪は、何歳からでも、競技歴がなくてもチャレンジできますし、自分の頑張り次第が目に見える形で還元されるというのは、本当に魅力的だと思います。
ガールズケイリンはまだまだ規模は小さいですし、もっともっと盛り上げいきたいので、たくさんの方に知って欲しいですね。……でも、私が現役のうちはいいかな(笑)。

Q:人生、変わりましたか?
変わりました。好きな車にも乗れたし、欲しいものも買えるようになったということもありますが、なによりも親が競輪を好きになってくれたんです。
ビーチバレーの時は、試合の日程なんて気にも留めなかった父が、ミッドナイト開催の夜11時にテレビをつけてレースを見てくれているというのがすごく嬉しいんです。少しは親孝行ができてるのかな、って。競輪に出会えて、本当によかったなと思います。
