早期卒業者のいま──養成所で育まれたトップレーサーたち
日本競輪選手養成所では、候補生の実力や成長に応じて、通常よりも早く卒業できる「早期卒業制度」を設けています。
制度の概要については以前の記事でご紹介しましたが、今回はその制度を活かして早期卒業を果たした選手たちが、現在どのように活躍しているのかをご紹介します。
寺崎浩平(117期/福井県・S級1班)

早期卒業第1号は、117期(2019年入所)に同時に2人が誕生。その1人が、寺崎浩平選手です。
第2回記録会でゴールデンキャップを獲得し早期卒業を果たすと、2020年1月のデビュー後は連勝を重ね、2020年3月にはS級2班へ特別昇級。競輪界の様々な記録を塗り替えていく活躍を見せます。

同時に、トラック競技ナショナルチームにも所属し、競技でも活躍。しかし「日本の競輪が楽しい」と語り、ナショナルチームを離れる決断を下した寺崎選手。
競輪に専念した2024年以降はG1決勝の常連となり、2025年8月「オールスター競輪」で悲願のGⅠ初優勝を果たしました。強豪ひしめく近畿エリアにおいて、次代の旗手として活躍しています。
菊池岳仁(117期/長野・S級1班)

寺崎選手と同じく117期で早期卒業を果たした菊池岳仁選手。
高校生ではスピードスケートに取り組み、3年時に自転車競技に転向すると一気に才能が開花。高校卒業と同時に日本競輪選手養成所に入所すると、第2回記録会にて400mと1000mの当時の養成所記録を打ち立て、ゴールデンキャップを獲得。

デビュー1年でS級へと昇級すると、同年8月には初めてG1に出場。翌2022年末には『ヤンググランプリ』を制し若手ナンバーワンの称号を手にしました。
若手の中でも特に勢いのあるレーサーとして、着実にキャリアを積み重ねています。
太田海也(121期/岡山・S級1班)

次なる早期卒業選手が誕生したのは、2021年入所の121期。またしても、2人同時となりました。
太田海也選手は大学までボート競技に励み、競輪選手への道へ進んだ“ゲームチェンジャー”の一人。
それでも、恵まれたフィジカルと持ち前の才能を武器に、第1回記録会でいきなりゴールデンキャップを獲得、早期卒業基準タイムをクリアする快挙を成し遂げました。

2022年1月のデビューと同じくして、トラック競技ナショナルチームにも加入。国内外の大会で好成績を収めて『パリオリンピック』に出場したほか、2024年『世界選手権』ではスプリント、チームスプリントで2つのメダルを獲得。
2025年には特別競輪にて連続して決勝進出を果たすなど、自転車との出会いをきっかけに、一気に人生を変えた太田選手。
現在もその道をまっすぐに突き進んでいます。
中野慎詞(121期/岩手・S級1班)

太田選手とは対照的に、高校時代から『ジャパントラックカップ』などで優勝するなど注目を集め、鳴り物入りで入所した中野慎詞選手。
第2回記録会でゴールデンキャップを得ると、2021年12月に早期卒業を果たしました。

早期卒業から約1週間後、2022年の1月1日にデビューすると完全優勝、そしてそこから破竹の30連勝という快進撃を見せ、同年8月にはG2(第38回共同通信社杯)出場。
同時に、トラック競技ナショナルチームの一員としても太田選手とともに短距離の中心選手として活躍。2024年の『パリオリンピック』ケイリンでは、メダルまであと一歩の4位という成績を収めました。
市田龍生都(127期/福井・A級3班)

太田選手・中野選手の早期卒業から3年。新たにこの快挙を成し遂げたのが、127期の市田龍生都選手。父に市田佳寿浩元選手(76期)を持つ“サラブレッド”として大学卒業後に日本競輪選手養成所へ入所すると、その期待に応える走りを見せ、第1回記録会でゴールデンキャップを獲得しました。

ゴールデンキャップを多数輩出した127期においても突出した走りを見せ早期卒業を決めると、2025年1月にデビュー。1月のデビュー2場所目で初黒星、病気欠場などアクシデントに見舞われるも、7月にはS級2班への特別昇級を達成しました。
トラック競技ナショナルチームのメンバーとしても、世界の舞台で活躍。スター街道を歩み始めた次世代の注目選手として、先輩たちに続く飛躍が期待されています。
「早期卒業」は、スタートライン
早期卒業制度は、単に「早く卒業できる」という仕組みではありません。
高い目標意識と確かな力を持つ候補生が、より早くプロの世界で力を発揮するための制度です。
卒業後も多くの早期卒業者が第一線で活躍しており、この制度が実力ある選手の成長を後押ししていることがうかがえます。
129期にも早期卒業候補者が誕生

2025年に入所した第129回からも、小笠原匠海候補生・髙橋奏多候補生の2名が早期卒業候補者として選出されました。
両候補生は今後、所定の試験および早期卒業候補者に対して実施する競輪選手資格検定に合格することで、同期の仲間たちよりも一足早くデビューを迎えることとなります。
養成所での日々を経て、次のステージへ。
“最速”で夢をつかむ、そのための挑戦は、これからも続いていきます。